治療が適さないケース
インプラント治療では、精密診断とともに、内科的診断も重要です。インプラント治療は、骨の成長が止まっている16歳以上の人なら、基本的には年齢や性別に関係なく可能なのですが、重度の全身疾患や慢性消耗性疾患のある人は慎重に対応する必要があります。
一般に以下のような疾患をお持ちの方はインプラント治療が適していません。治療を希望される場合、内科主治医がいる方は、事前に相談してみることをお勧めします。
糖尿病の方は、さまざまな組織の細胞に障害が発生するため。血管内皮細胞の障害によって傷の治りが悪くなっています。また免疫系の働きの低下によって、細菌感染に対する抵抗力も低下しています。したがってインプラント治療には向いていません。
しかし、糖尿病の方でも、食事療法や内服薬の投与、あるいはインスリン自己注射によって、血糖値が良好にコントロールされていれば、インプラント治療を受けることは可能です。(その場合、手術の規模を最小化することが重要です。)
急性肝炎、肝硬変、重度の肝疾患がある人もインプラント治療には向いていません。肝硬変の場合、血漿中の主なたんぱく質であるアルブミンが肝臓で合成されないばかりか、血液を凝固させる因子も合成が十分ではありません。したがって、手術をすると止血しない恐れもあります。また、手術による刺激で急激に肝機能が悪化する場合もありえます。また手術時に投与される薬剤が肝臓で代謝されないこともあります。このような理由により、重度名の重度の肝疾患がある方がインプラント治療を受ける場合は十分な術前評価が必要です。
息が上がって階段が登れない、枕を背中にあてないと息苦しくて眠れない、いつも下肢がむくんでいる、などの症状がある人は、インプラント治療にさきだって、内科医の診察が必要です。
狭心症については最近1~2ヵ月発作がないか、あっても軽度な場合、そして心筋梗塞については発作後半年以上を経過している場合は、インプラント治療を行える可能性はあります。
一方、心臓弁膜症で人工弁置換術を受けた方や不整脈治療のために体内型ペースメーカーを入れている方は、口腔内の細菌がこれらの人工物に付着して、感染性心内膜炎を起こす危険性があるので避けるべきです。
腎疾患の人は免疫力が低下していることが多く、傷が治りにくいので注意が必要です。特に血液透析を受けているような場合は、骨が脆くなっているのでインプラント治療は向いていません。
血液透析では、前腕に動脈と静脈の吻合を作るため、やはり細菌が遠隔臓器に飛ぶ可能性があるため、手術は危険です。